慢性腎臓病が進行し、何らかの症状が現れたり生活へ支障をきたすようになったら、透析治療を受ける必要があります。腎臓病の治療法として有名な人工透析ですが、具体的には、どのような方法で治療を行い、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。
人工透析の種類と注意点について解説します。
腎臓の機能が低下し、自らの力では生命活動を維持できないと医師が判断した場合は、食事や薬物治療に加えて、透析療法を始めることになります。
人工透析へと移行する基準は一般的に、血液中のクレアチニンや尿素窒素などのいわゆる毒素(不要物)の含有量が、正常の10倍ほどになってしまったとき、と言われています。腎臓がそれらの不要物を体外へ排出するための尿を作り出すことができなくなっている、という目安になるからです。
具体的には、クレアチニン8㎎/dl以上、尿素窒素100㎎/dl以上という数字を超える数値が出た場合は、透析療法へと移行します。
また、利尿剤などの薬物を投与しても強いむくみが取れない場合や、心不全などを引き起こす危険がある場合、カリウムなどの数値が異常に高い場合などでも、人工透析を開始することがあります。
慢性腎臓病の患者さんの中には、末期と言えるほど腎機能が低下するまで自覚症状が現れないことがよくあります。医師から人工透析治療が必要だと診断されても、ご本人に症状がないのでなかなか理解できないこともあり、厄介な問題となってしまいます。
しかし、人工透析を始めたとたんに『体が楽になった…』と実感する患者さんも多く、慢性腎臓病の最後の切り札として、透析治療は大きな役割を持っているのです。
人工透析には大きく分けて2つの種類があります。ご自身の病状やライフスタイルに合わせて選択することができますので、それぞれの方法の特徴や、どのような基準で選ぶべきかなどを解説していきましょう。
体内の血液をいったん外に出し、ダイアライザーという装置を通すことで血液中の不要物や余分な水分を取り除く治療を血液透析と言います。一般的に人工透析というと、この血液透析の事をイメージされる方が多いでしょう。日本では最も普及している透析方法です。
血液透析を行う際には、1度に大量の血液を外に出す必要があります。通常の採血のように静脈だけで行うことは不可能なので、腕に内シャントと呼ばれる血液の出入り口を作らなければなりません。内シャントは動脈と静脈をつなぎ合わせて、勢いよく血液が流れ出る静脈を作り出します。つなぎ合わせた血管が十分になじんでからでないと透析治療ができないので、透析に移行する前にあらかじめ内シャントを作っておきます。
血液透析は、腎臓が24時間常に行っている働きを、体外にある装置を使って短時間で行うわけですから、それなりの手間がかかります。1週間に3回ほど通院し、1回の治療には4時間ほどの時間を要します。透析を行う病院が遠い方、通院に時間が割けない方にとっては、負担が大きい治療法です。
腹膜透析は、血液透析に比べるとそれほど普及している方法ではありませんが、自宅でも行える透析方法として腎不全の患者さんのひとつの選択肢となっています。
腹腔透析は、手術によっておへその脇に穴を開けて腹腔という場所へカテーテルを通し、そこから透析液を腹腔に溜めることで、体の中の老廃物を透析液へと移動させて体外へ排出する方法。時間をかけてゆっくり行う透析ですから、本来の腎臓の働きに近く、腎臓自体の機能も残しながら行うことができるのが特徴です。医師や看護師がいなくても、患者自らが自宅で行うことができる治療なので、通院は月に1~2回で済むというメリットもあります。
しかし、腹膜は使い続けるうちに機能が落ちてくると言われていて、腹膜透析が行えるのは長くても7年程度なのだとか。いずれは血液透析へと移行しなければならない点がデメリット。血液透析に比べるとまだ普及していないので、治療が行える病院が少ないというのも難点です。
人工透析治療は、長期間続けることになりますからトラブルを避けるために注意しなければならない点がいくつかあります。
まず、人工透析によって腎機能を代替するだけではなく、体の負担にならないよう食事に配慮するなど、日常生活に気を使う必要があります。また心不全や脳卒中、さまざまな感染症などの合併症にも十分注意しなければなりませんね。
さらに、人工透析を行っている患者さんの中には、最高血圧が100以下となる低血圧症、骨や関節の不調を訴える患者さんも多いようです。骨の異常を防ぐ薬物療法と併用するなど、医師と相談しながら体調を管理していくことが大切です。
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