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たんぱく質を増やさずカロリーをキープするコツ|腎臓病の食事療法

腎臓病のたんぱく質制限について

腎臓病の食事療法といえば、代表格なのがたんぱく質制限です。腎臓病のステージによって、1日に摂取してよいたんぱく質の量が異なります。

腎臓病食食品交換表などを参照しながら計算しますが、まずはどの食品にどれくらいたんぱく質が含まれているのか、知っておく必要があります。じつは意外な食べ物にもたんぱく質が含まれています。

ここでは、なぜたんぱく質を控えなければならないのか、どの食品にどれくらいのたんぱく質が含まれているのかなど、腎臓病食のたんぱく質を上手にコントロールするコツについて説明していきます。 

なぜたんぱく質を制限しなければならないのか

炭水化物や脂質がエネルギー源として代謝されると、汗や尿、二酸化炭素になって体外に排泄されますが、たんぱく質はエネルギーとして燃焼すると、尿素窒素や尿酸といった老廃物を排泄するため、腎臓をフル稼働させなければ排泄ができません。腎臓がしっかり働いているときは代謝できるので問題ありませんが、腎臓の機能が低下している場合は注意しましょう。

腎機能の低下により老廃物が体外に排泄されなくなると、処理しきれなくなった毒素が体内にとどまり、さまざまな疾病リスクが高まります。そのため、機能しない腎臓の代わりに人工透析によって血液の老廃物を除去し、不要な水分を排泄し、ろ過されてきれいになった血液を体内に戻す治療を行ないます。

腎機能が低下した場合は、食事で腎臓に負担をかけないように医師の指示に従って1日に摂取するたんぱく質の量を守ることが大切。主食や野菜、お菓子類、さらには調味料にもたんぱく質は含まれています。たんぱく質制限があればあるほど、肉などの動物性たんぱく質や魚のたんぱく質から、良質のたんぱく質を摂取するようにしましょう。

摂取すべきたんぱく質の量とは

腎臓病で摂取すべきたんぱく質の量とは

たんぱく質と聞くと肉や魚などをイメージしがちですが、じつはあらゆる食品にたんぱく質は含まれています。ご飯やパンなどの主食や、野菜や果物などにも意外と含まれているもので、日本人は平均すると1日に60gから80g程度のたんぱく質を摂取している計算になるようです。

腎機能の状態によってたんぱく質制限は異なりますが、1日当たりのたんぱく質量が、体重1キロあたり0.6~0.7gの制限の場合、たとえば、体重60キロの方なら1日の目安は36~42gという計算になります。ですから腎臓病の食事療法では、たんぱく質量を普段の約半分に減らす必要があるわけです。

腎臓病の食事療法のガイドラインによると、腎臓病の方の1日当たりのたんぱく質量が、体重1キロあたり0.6~0.7gに制限されている場合、体重60キロの方なら1日の目安は36~42gとなりますね。ですから腎臓病の食事療法では、たんぱく質量を普段の約半分に減らす必要があるわけです。

以下に主な食品のたんぱく質含有量を書き出してみました。洋菓子はたまごや生クリーム、牛乳などたんぱく質を多く含む材料を使いますので、注意が必要です。

食品に含まれるたんぱく質の量 ※食品100g中のたんぱく質含有量

ご飯(精白米) 2.5g そうめん 9.5g
うどん(ゆで) 2.6g 牛乳(成分無調整) 3.3g
食パン 9.3g 牛乳(低脂肪乳) 3.8g
カップラーメン 10.7g ホウレンソウ 2.6g
豆腐(絹ごし) 4.9g 大根 2.2g
イワシ(焼き) 25.8g カボチャ 1.9g
塩サケ 22.4g タマネギ 1.0g
するめ 69.2g パルメザンチーズ 44.0g
鶏ささみ 23.0g シュークリーム 8.4g
豚もも肉 20.5g ドーナツ 7.0g
牛ひれ肉 19.1g バナナ 1.1g
ロースハム 16.8g イチゴ 0.9g
たまご(生) 12.3g ミカン 0.7g

こうして食品をグラム表示されても、そのボリュームのイメージがわきにくいですよね?そこで参考にできるものがないか探してみたところ、参考になりそうなサイトを発見しました。大塚製薬のオフィシャルサイトに載っている食品選択表(1日1200㎉・たんぱく質40g)がそれです。

大塚製薬の食品選択表の画像
食品選択表(1日1200㎉・たんぱく質40g)
画像引用元:家庭でできる肝臓食 - 大塚製薬 http://www.otsuka.co.jp/health_illness/medicine/en01/page03.html

これは肝臓病食用のページなのですが、手のひらに食品を置いて、見た目でこれくらい何種類食べられますと紹介されているもの。鶏肉のささみ15gってこんなにちょっとなのね、などと視覚的に確認できて便利。腎臓病食のものではないので、あくまで見た目の参考程度に。

たんぱく質を制限するとどんな問題が起きる?

たんぱく質は食品の3大栄養素のひとつです。摂取量を制限すると、当然ですが栄養バランスが崩れてしまいます。カラダ作りに重要な役割を果たすたんぱく質を減らすことでいちばん注意しなければならないのは、活動するためのエネルギー源の確保です。

1日の必要エネルギー量は身長と体重から計算式で出しますが、病状が進むとなかなか目標とする総エネルギー量を摂ることが困難になります。特に高齢者のかたや糖尿病性腎症のかたは、なにを食べればいいのかわからず、やせ細ってしまう人が少なくないようです。

活動するために必要なエネルギー源が確保できないと、私たちのカラダは自分自身が体内に持っているたんぱく質、すなわち自分の筋肉を代謝してエネルギー源に替えてしまいます。口から摂取するたんぱく質の量を制限しているのに、腎臓は体内のたんぱく質が燃焼されたあとの老廃物を処理しなければならず、結果的にはさらに腎機能が低下してしまうことになるのです。

たんぱく質を増やさず、カロリー(エネルギー)をキープするコツ

カロリー(エネルギー)を落とさずたんぱく質を減らすコツ

どの食品にどれくらいたんぱく質が含まれているか知ることも大切ですが、低たんぱくで高エネルギーの食品を活用して活動に必要なエネルギーが確保できるようにします。たんぱく質、塩分、カリウム、リンといった成分が調整された特殊食品が通販などで手軽に入手できます。

さらに1日に一度は揚げ物や炒め物を食べるようにしたり、煮物も一度油で炒めてから煮る炒め煮にしたり。またオリーブ油やごま油などたんぱく質を含まない油類をドレッシングなどに使うなど、調理法や食べ方を工夫すれば必要なエネルギーを摂ることができます。

腎臓病用の特殊食品の中には、油脂の中でも代謝が早く、消化に負担をかけない中鎖脂肪酸油(MCTオイル)などもあります。また美容効果などで人気が高いココナッツオイルも中鎖脂肪酸が多く含まれ、消化・吸収がいいためおすすめできる油脂のひとつです。

良質なたんぱく質を意識して取り入れる

たんぱく質を制限するときに大切なことは、良質なたんぱく質を選んで医師の指示量を摂取するように努力すること。良質のたんぱく質というのは、摂取後に体内で効率よく利用され、老廃物として排出される量が少ないもののことをいいます。

制限があるからこそ、良質なたんぱく質を摂ることがポイント。たんぱく質の栄養価を示す指標に「アミノ酸スコア」というものがあるのですが、そのアミノ酸スコアの上限値100の食品からたんぱく質を摂るようにします。

たとえば、肉類や魚類はアミノ酸スコアが100であるのに対し、精白米は65、食パンは44、うどんは41と主食類の食品にはアミノ酸スコアの低いものが多い。主食であるごはんと肉や魚を一緒に摂取することで、アミノ酸スコアのバランスが整います。ですから、同じたんぱく質を摂るのであれば、肉や魚といった(加工品でない)主菜の食品から摂るようにすべきでしょう

普段の食材と腎臓病食用の特殊食品を上手に組み合わせ、調理法やデザートなども工夫して、少しでもたんぱく質制限のストレスが軽減するようにしていきましょう。忙しくて腎臓病食が作れないときなどは、療養食の宅配サービスなどを活用してみるとよいと思います。冷凍食であれば保存が利くので、いざというとき便利です。

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