腎臓は体内の情報ネットワークのかなめであり、体の機能をコントロールするさまざまなホルモンを分泌しています。そのひとつにエリスロポエチンというホルモンがあります。
これは赤血球をつくりだすはたらきが活発になるように促進するホルモンなのですが、腎機能が低下するとこのエリスロポエチンの分泌量が減り、赤血球をつくる能力が低下します。腎臓の機能低下が原因で起きる貧血症状を「腎性貧血」といいます。
赤血球は体中に酸素をはこぶ役割を持っているため、赤血球の数が減ることで疲れやすく、動悸や息切れ、めまいなど日常生活に支障をきたすような症状があらわれます。
ただしこの腎性貧血はゆっくりと進行するため、体がこの症状に慣れてしまって、腎臓の異変に気付かないケースが多いという問題があります。
さらに全身の酸素不足をカバーするため、少ない酸素を全身に送り出そうとして心臓に負担がかかってしまう傾向があるため、狭心症や不整脈など循環器系に不安を抱えている人は、腎臓の治療だけでなく心機能の経過観察も不可欠です。
同じ貧血でも、よく耳にする鉄分不足から生じる「鉄欠乏性貧血」と腎性貧血、症状は似ていますが原因も治療法も異なります。鉄欠乏性の貧血であれば鉄剤の投与で症状は改善しますが、腎性貧血はまず低下してしまった腎臓の機能を改善する治療をする必要があります。
腎性貧血の治療では、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を用いて、エリスロポエチンの分泌不足を助けていきます。また、鉄剤を内服したり、食事面で鉄分を補うこともしていきます。ただし、慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、ヘモグロビン値によって、腎性貧血治療薬を減らしたり休薬する場合もあります。
また心臓や血管に重篤な疾患がある患者さんにも、同様の対応をする場合があります。鉄剤により心筋梗塞や狭心症などのリスクが高まってしまうからです。血圧上昇や頭痛などの副作用があらわれることもあるため、いずれにしても、個々の患者さんの病態に合わせて、ヘモグロビン値の治療目標値を設定した上で、治療をすすめていくことになります。
この腎性貧血の治療は慢性腎臓病にともなうさまざまな症状の改善にも有効であるため、専門医の指示にしたがってしっかり治療することが大切です。
近年では、従来よりも投与回数が少ない持続型の赤血球造血刺激因子製剤も開発されているので、腎性貧血治療の選択肢は増えているといえます。
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