人工透析治療は、腎不全など腎機能が低下している患者さんにとって、命を繋ぐためにとても重要な治療です。ですがその治療には、多量の水と電気が必要となるため、災害により停電や断水が起こりライフラインが断たれた場合、透析治療を継続していくことは非常に困難な状況となってしまいます。
ではそもそも、透析治療にはどのくらいの水と電気が必要となってくるのでしょうか。
例えば標準的な血液透析の場合、1回の透析で一人当たり約120ℓの水道水が必要ですが、その他にも配管の洗浄や治療の準備のために水を使いますので、実質上は120ℓよりも多くの水が透析治療のために必要です。
また電気に関しても水と同様、1回の血液透析が4~5時間かかりますので、その間人工腎臓機器を電気で稼働させ続けることのできる電力が必要となります。
このように、透析治療を安全に行うには、多量の水と電気は必要不可欠なもので、どちらかが欠けただけでも治療を継続することは困難となるのです。これは、血液透析に限らず腹膜透析も同様です。
自然災害はいつどこで起こるかわかりません。いざという時のために、平常時から備えや対策をしておくことで、もしも緊急事態となった時に慌てずに対応できるよう、ご家族も含めて態勢を整えておきましょう。
透析患者さんが個人としてできる備えとしては、まず透析治療を行っている病院がどのような災害対策をしているかチェックすることが挙げられます。万が一、透析中に災害にあった場合どのような対応をしてくれるのか、また災害時に備えどのような対策・準備を整えているのかなど調べておくと安心です。
その他にも、下記のような準備をしておくことが推奨されています。
透析を行っている医療機関の多くでも、災害による緊急事態に備え対策が整えられています。病院施設の対策としては、停電時に備えた自家発電や断水時に備えた貯水槽の設置、災害発生時の患者さんの安全確保のための避難・誘導訓練などが行われているそうです。
また、自治体や水道局、電力会社、救急隊、他地域施設などとの協力体制や、近隣地区への援助要請方法の確認など、透析患者さんが安全かつ速やかに透析治療を再開できるよう、対策がとられているそうです。
病院の災害対策の一例として、「両国東口クリニック」が掲げている対策を簡単にご紹介します。
<参考文献>
バクスター株式会社 自宅で行う透析療法 腹膜透析情報サイト(資料)
http://www.fukumakutouseki.jp/smile/kanto/pdf/2012_summer_manual.pdf
じんラボ(一般社団法人ペイシェントフッド) 災害時と透析:いざという時に備えて知っておきたいこと
https://www.jinlab.jp/basic/other_3disaster_preparation.html
両国東口クリニック 当院における災害対策について(資料)
http://higasiguti.jp/page/tg/2005uchida.pdf