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人工透析となる状態・条件

人工透析が必要になる基準

薬物療法や食事療法といった治療を行っても腎機能の低下が進み、腎臓が機能しなくなる慢性腎不全へと症状が移行してしまうと、血液中に含まれる老廃物や余分な水分が排出されなくなります。すると、身体に水分が溜まりひどいむくみや内臓機能の低下、病状が進めば生命にも関わる深刻な状態にも陥ってしまいます。

そんな病状の治療には、本来なら腎臓が行う血液のろ過・水分の排出を人工的に行う、腎代替療法である人工透析治療が有効となります。

透析を導入するかどうかは専門医の診断によってなされますが、日本ではその基準となるものとして、患者さんの状態をチェックする「透析導入適応の基準」が厚生労働省によって定められています。

患者さんの腎機能が正常の10%~15%以下となった時、その状態を「透析導入適応の基準」で定められた「症状」「腎機能」「日常生活障害度」の項目に照らし合わせ、その合計点数が60点以上となった場合、透析が必要な状態と判断され、その導入時期などの検討に入ります。

ただし患者さんが10歳以下、または65歳以上の高齢者、糖尿病・膠原病・動脈硬化疾患など全身性血管合併症がある、といった場合は項目の合計点に10点を加算して判断します。「透析導入適応の基準」の内容については、下記の通りとなります。

透析導入基準①症状

  • 体の水分の貯留(むくみ・胸水)
  • 酸塩基電解質異常(高カリウム血症・酸の貯留)
  • 消化管症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)
  • 心臓症状(呼吸困難・息切れ・心不全・著明な高血圧)
  • 神経症状(意識混濁・けいれん・しびれ)
  • 血液異常(貧血・出血が止まりにくい)
  • 目の症状(かすみ目)

身体の症状に照らし合わせ、以上の項目のうち3つ以上当てはまった場合30点、2つは20点、1つは10点となります。

透析導入基準②腎機能

  • 持続的に血清Cr8㎎/dl以上、またはクレアチニンクリアランス(Ccr)10ml/min以下…30点
  • 血清Cr5~8㎎/dl(Ccr10~20ml/min未満)…20点
  • 血清Cr3~5㎎/dl未満(Ccr20~30ml/min未満)…10点

※患者さんが小児である場合、Ccrを基準とします。

透析導入基準③日常生活障害度

  • 起床することができない(高度)…30点
  • 日常生活が著しく制限される(中程度)…20点
  • 通勤、通学といった運動や家事などの労働が困難である(軽度)…10点

その他の判断基準

医師が人工透析の導入を検討するにあたって、「透析導入適応の基準」の他にも、透析治療が必要と判断される症状の基準があります。それが、「尿毒症」「高カリウム血症」「心不全」といった症状です。患者さんにこれらの症状があり、なおかつ適切な治療を行っても改善が見られない場合、たとえ腎機能が正常の15%以上あっても、人工透析治療が必要と判断されます。


<参考文献>

日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php

透析治療ガイドライン
https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html

日本透析医学会雑誌 血液透析導入のタイミング
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/46/12/46_1134/_pdf/-char/ja

透析療法を始めるとき(アステラス製薬)
https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/dialysis/basicinformation08.html

東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター
http://www.twmu.ac.jp/NEP/touseki/touseki-kijyun.html

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