日本透析医学会が毎年発表している「わが国の慢性透析療法の現況」によれば、人工透析を始める患者の43.7%がこの糖尿病性腎症なのだそうです。
全国で16,072人(2015年12月時点)もの患者さんが透析療法に移行せざるを得ない糖尿病性腎症とは、どのような病気なのか説明していきたいと思います。
糖尿病患者さんの中で、特に罹患歴が長く血糖値の高い状態が10年以上も続いている方は、全身の血管に大きな負担がかかっている状態が長期間続くことになります。動脈硬化が様々な器官で影響を与えるようになり、そのひとつとして腎臓でも機能低下を起こすことがあるのです。次第に尿タンパクが出始め、むくみが顕著になってネフローゼ症候群の症状が出る場合もありますし、慢性腎不全へと進行するケースもあるようです。
最近特に患者数が増えていて、人工透析を始める患者さんの原因となる腎疾患では第1位だと言われているそう。新たに透析治療を始める方の5人に2人は、糖尿病成人症が原因の腎不全であるとされています。
糖尿病が原因で尿タンパクが出ると、ほぼ数年で透析治療へと移行すると言われているほど、この病気は進行が速いのが特徴です。腎機能の低下を食い止めるには、できるだけ早期に病気を発見し、治療を始めることが大切。
この病気のごく初期には、通常の尿検査ではタンパク尿が陰性と判断されていても、微量のアルブミンを含んだ尿が出ることがあります。この微量なアルブミン尿が出るごく初期の段階を逃さずに治療を行うと、本格的な腎症へと進行することを食い止めることができるのです。
微量アルブミン尿期は、特に自覚症状がないので、特殊な尿検査を行うことでアルブミン量を特定して判断します。この時期にしっかりと糖尿病の治療や血糖の管理を行うことで、腎臓の機能低下を防ぎましょう。
糖尿病が原因で腎症を発症した場合は、腎疾患の治療と同時に糖尿病治療も継続しなければなりません。血糖管理が重要であることに変わりはないのです。
しかし、少し肥満気味の糖尿病患者さんの場合、腎症と診断された途端に血糖を下げようと急激なダイエットをして、体調を崩してしまう方がいらっしゃるそうです。これでは、血糖の管理はできたとしても栄養失調で肺炎などの合併症にかかってしまうこともありますね。
あくまでも過激な制限はNG。摂取カロリーや標準体重を守って、身体の負担とならない血糖管理を行いましょう。食事制限だけで無理な場合は、血糖降下剤を飲んだり、インスリン注射などを行うことをおすすめします。
糖尿病も腎臓病も、治療の基本は食事療法です。しかし、糖尿病の場合の食事制限と腎臓病の食事制限とでは、矛盾する部分が出てきてしまうことも否めません。
糖尿病の食事療法では、血糖を上げないために糖分を制限し、その分タンパク質を摂るように指導されます。しかし、腎臓病食ではタンパク質の制限を行い、糖質と脂質とでカロリーを補うよう指導されるのです。
これまで行ってきた食事療法とは真逆の事を言われるので、患者さん自身が混乱してしまうことはもちろん、間違った方法で食事療法を続けてしまうケースもあると言います。
ですから、糖尿病性腎症の場合は、患者さんの年齢や体格、病気の進行具合などを総合的に判断し、医師や栄養士がその方に合った食事療法を指導するのが基本です。
糖尿病が原因で腎不全となってしまった患者さんの場合は、高齢で標準体重よりも痩せている方が多いので、主に糖尿病の食事療法をベースにして、厳密なタンパク制限は行わず、腎臓病の食事療法を部分的に加える方法が取られるケースが多いようです。
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