ネフローゼ症候群という名前からもわかるように、ひとつの病気ではなく、腎臓の糸球体が正常に機能しなくなり体内にとどまるべきたんぱく質まで尿として排泄してしまう病気の総称です。
原因が特定できない一次性(原発性)糖尿病などほかの病気が原因で発症する二次性(続発性)のものがあります。1歳半~4歳くらいまでの男の子に発症することが多く、2015年7月より厚労省が特定難病に指定しました。
それではここで、ネフローゼ症候群の症状や原因となる病気、治療法などについて解説していきたいと思います。
ネフローゼ症候群の初期症状として現れるのは、倦怠感や疲労感、食欲不振などといった、通常の体調不良と区別できない症状が多いのですが、病状が進むと尿や血液中のタンパク値の異常とむくみが出てきます。
具体的には、通常0.5g以上で再検査が必要だとされる尿タンパクの量が1日に3.5g以上に上昇し、血液検査では血中のアルブミンというたんぱく質(正常値4.0g/dl)が、3.0g/dl以下に低下します。
これは、血液中のタンパク質が腎臓機能の異常によって尿の中に多量に出てしまい、低蛋白血症となってむくみが現れてしまうことを意味しています。特に、血中のアルブミンが低下するとむくみが出ると言われ、尿・血液検査の異常とむくみが同時に出ている場合はネフローゼ症候群とされるようです。
むくみを見つけるためには、手足などを指で10秒ほどきつく押し、指の跡(へこみ)が持続するかどうかで判断しましょう。へこんだあとがなかなか戻らない…というのであれば、手足がむくんでいる可能性があります。むくみが全身に現れると5キロ以上の体重増加や、腹水、胸水、肺浮腫まで起こすこともあるそうです。
ネフローゼ症候群の原因は、慢性糸球体腎炎や膜性腎炎などの腎臓疾患が最も多いとされています。糖尿病性腎症、膠原病などでもネフローゼ症候群の症状が現れることがあります。
小さいお子さんの場合は、ほとんどのケースで微小変化型ネフローゼ症候群が原因であると言われ、日本では10万人に5人くらいの割合で発症するとされています。
ネフローゼ症候群の場合も、原因となる病気の種類によって治療法が異なります。
例えば、最も多いとされている慢性糸球体腎炎の場合は、副腎皮質ステロイドホルモンや免疫抑制剤などの薬剤を服用する薬物療法を行います。微小変化型ネフローゼ症候群の場合も、同様に副腎皮質ステロイドホルモンが使用され、この治療だけで尿タンパクが消えることがほとんどなのだとか。
ステロイド剤の投与で尿タンパクが減らない場合は、さらに強めのステロイド静注パルス療法などを行うこともあるそうです。さらに効果が出ない時には、免疫抑制剤を併用します。
ネフローゼ症候群では、血液が凝固しやすくなることがあり、心筋梗塞や脳梗塞などの血管障害が起こることがあります。そこで、抗血小板薬や抗凝固剤などが使用されることもあります。血中コレステロールが上昇する症状が出ている方には、コレステロールを下げる薬を併用することもあるそうです。
ステロイド剤や免疫抑制剤を投与しても、なかなか症状が改善しないという方は、難治性ネフローゼ症候群と診断されます。
この場合、ステロイド剤などは副作用が強い薬剤なので長期間使用することはやめ、むくみや合併症が出ないように指導だけが行われる、対症療法へと切り替えることがあるそうです。
塩分制限と安静にすることが基本で、全身のむくみが進んでいないかどうか、体重増加3%以内を目安に管理します。
むくみがひどくなるようなら利尿剤を飲むこともあります。利尿剤は飲んでから3時間で一番効果が高くなるそうで、この時間はすぐにトイレに行けるよう安静にしておくことが大切です。
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