腹膜透析方法の一つであるCAPD透析(持続携帯式腹膜透析)とは、お腹の中に透析液を一定時間貯留させることで、腹膜を通じ血液内の老廃物や余分な水分を透析液へ移動させ、それを排出させることで血液をきれいにしていく方法です。
CAPD透析の大きな特徴と言えるのが、1日のうちに4回程度(朝・昼・夕方・就寝前)、パックとカテーテルを繋げて、まず腹内に入っていた透析液を空の袋に排出し、その後に新しい透析液の入ったパックから腹内に約1.5~2ℓの透析液を注入する、といった交換を患者さん自身または介助者が医療機関ではなく自宅で行っていくという点です。
自宅で自らが透析治療を行っていくため、通院は血液透析のように週3回ペースではなく、月に2回程度でよいというのも、この方法が持っている特徴と言えるでしょう。このような、もっとも基本的な腹膜透析方法ともいわれるこのCAPD透析を行うことには、どんなメリットやデメリットが指摘されているのでしょうか。
CAPD透析の最大のメリットと言えるのが、やはりQOL(生活の質)の向上が一番に挙げられるでしょう。1回のパック交換には約30分ほどの時間が必要になりますが、それ以外の時間は普通に日常生活を送ることが可能です。
また、医療施設に通院して透析を受けるのではなく、自宅で患者さん自らが交換作業を行っていく方法ですので、時間的な拘束が少なく、自分のスケジュールに合わせて交換作業を行うことができるのも、社会復帰を希望する方にはとても大きなメリットと言えるでしょう。
お腹の腹膜を利用した方法のため、治療による体への負担が少なく、食事制限が穏やかなことも、CAPD透析のメリットとされています。
CAPD透析は、患者さんまたは介助者(ご家族など)がパック交換を行っていくため、緊急時の対応が遅れてしまう危険性があります。そのため、パック交換に関する処置などがしっかりとでき、なおかつ家族の理解とサポートが受けられることが、導入の必須条件となっています。
管理が悪ければ、腹部に挿入されたカテーテルから感染症が起こったり、腹膜炎を発症するなどの合併症が起こる可能性が高まります。
また、残腎機能が低下していけば血液透析に治療を移行しなければならなくなるため、長期的に継続できる透析方法とは言えない点なども、デメリットとして挙げられています。
社会復帰を強く希望されていて、CAPD透析の管理がしっかりとできる方、家族や介助者が理解してしっかりサポートしてくれる方に、CAPD透析方法は適しているといえます。
腎不全が進行してきて透析療法が必要と診断されたが、尿が十分に出る残腎機能がある方も、CAPD透析に適しているとされます。またその他にも、血管の状態や右心不全などでシャントを造ることができない方、地理的な条件などで血液透析を受けるために通院するのが困難な方も、CAPD透析方法を検討されるのに適していると考えられます。
血液透析を受けていたが、血圧が低く除水するともっと血圧が下がり、何度も意識がなくなることがあった。生きていてもしようがないと思った。CAPDにかえてからは、そういうことが起こらなくなった。今は生きていることが楽しい。
(60歳・女性)
腎不全といわれたとき、近所に住んでいる開業医が自分でCAPDをしているのを知っていたので、その人に話をきき、これに決めた。自分の親戚に「もうすぐ透析を」といわれている人がいる。彼にも全部私が説明してこれを奨めた。
(70歳・男性)
血液透析はベッドに4時間じっとねていなくてはならない。あれが苦痛なのだ。CAPDはそういうことがないからいいんだよ。
(45歳・男性)
※出典・byakkokai.jp/capd3.html (社会医療法人白光会 白石病院)
※体験談はあくまでもひとつのケースであり、個人によって効果や状態は異なります。
<参考文献>
日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php
透析治療ガイドライン
https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html
東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター公式サイト(血液透析と腹膜透析の比較)
http://www.twmu.ac.jp/NEP/hukumaku-toseki.html
大阪府立急性期・総合医療センター公式サイト CAPDとは?
http://plaza.umin.ac.jp/~kidney/toseki_capd.html
関西CAPD看護研究会公式サイト 腹膜透析(CAPD/APD)とは?
http://www.kansai-capd-ns.com/capd/