腎臓病について調べているということは、ご自分かご家族に腎臓病の兆しが見られるということでしょうか。腎臓は、わたしたちの体に不可欠な重要な働きをもっています。例えば…
先日放送されたNHKスペシャル「人体」第1回めで取り上げられた腎臓は、番組内で人間の寿命を決めるほどに重要な働きをしている臓器であると繰り返し説明されていました。握りこぶしほどの小さな臓器に体内の血液総量の4分の1もの血液が集まり、全身の酸素濃度をコントロールしているのだそうです。最新医療の分野では、高血圧の治療のために腎臓を手術するという驚きの治療法も紹介されました。心臓や脳に次ぐ重要な臓器であるという認識を持っている人のほうが、おそらく少ないのではないでしょうか。
そんな肝腎かなめの腎機能が落ちても、自覚症状がほとんどないのが腎臓病の怖いところ。「もしかしたら腎臓病なんじゃないか?」「健康診断での数値が気になる。腎臓内科や泌尿器科に行くべきか?」と不安を感じている人のために、腎臓病の初期症状や自覚症状について調べた内容を紹介しています。具体的にどのような症状が現れやすいのか、どのような症状が出たら緊急性が高いのかなどを説明したいと思います。
腎臓病の特徴として気をつけたいのは、初期症状の段階ではなかなか自覚できない病気であること。専門家の説明によれば、腎臓の機能が2~3割でも働いていれば、血液や尿の数値に表れないといわれています。ですから、気づいたときには“サイレントキラー”などといわれる慢性腎臓病(CKD)だった、という可能性もある怖い病気です。
この慢性腎臓病は、なんと日本人の8人に1人が発症する新たな国民病ともいわれています。そして、腎臓機能が悪化すると人工透析という治療を受けなければなりません。日本透析医学会の統計調査「わが国の慢性透析療法の現況」によれば、人工透析を受けている人は32万448人(2014年末集計)にものぼり、特に高齢者の場合は他人事ではない病気なのです。
実際、同調査の2015年度版(※)によれば、人工透析を受ける患者数は1968年から延々と右肩上がりに増えています。唯一患者数が減った1989年も、他年度に比べてアンケートの回収率が低かったことが理由だとわかっています。
腎臓病とそれに関連する人工透析患者数の増加は現代日本において非常に深刻な問題です。
※参考:『わが国の慢性透析療法の現況 2015年12月31日現在』日本透析医学会
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2016/2015all.pdf
一度腎不全などの重とくな腎臓病にかかってしまうと、一生人工透析が必要になります。人工透析は機能しなくなった腎臓の代わりに機械を使って血液中の不要物を取り除く治療です。平均して週に3度、1回4時間ほどかかってしまいます。そのため、腎臓病になり人工透析が必要になった結果、勤めていた会社で働けなくなってしまったというケースも少なくありません。
人工透析には専門の機械が必要です。震災時は透析を受けられないことが命に直結しますし、高齢になってから遠い病院に通わなければならない場合も。
初期症状を見落とさず、なるべく腎臓病が悪化しないうちに病院へいく必要があります。
透析治療については下のページにまとめているため、興味のある方はぜひご覧ください。
先ほども触れたように、腎臓はカラダの老廃物をろ過する役割を担っていますが、日常生活のなかで特に腎臓への負担が多くなる原因物質は、たんぱく質と塩分です。
炭水化物や脂質は呼吸や尿などによって排泄されるため、老廃物はほとんどありません。
一方、たんぱく質は燃焼後に尿素窒素や尿酸など、人体に害を及ぼす有害な老廃物が残ってしまいます。腎臓はこの有害物質を無害化する役割があるため、たんぱく質の大量摂取は腎臓に負担をかけることになります。さらに血中の塩化ナトリウム(塩分)が多いと、腎臓が必要量以上の塩分を尿として体外に排出しようとして酷使されます。塩分の摂りすぎは腎臓に負担を強いることになるのです。たんぱく質と塩分に関する食事療法のコツや注意点については、下記ページで詳しく説明しています。
年齢によって気をつけなければいけないポイントは異なりますが、共通していえることは次のような傾向がある人は、知らず知らずのうちに腎臓に大きな負担をかけている可能性が高い、と自覚する必要があります。
腎臓は非常にがまん強い臓器であるため、病状が進まないと血液や尿の数値に現れにくいです。中高年以降は、特にこうした生活習慣を見直さなないと腎臓病の予防は難しいでしょう。
腎臓病リスクがわかっていたとしても、いま現在体調が良く健康診断の数値にも問題がない場合、毎日の食生活や味の好みを見直すことはなかなかできないもの。それでも、いったん腎臓病と診断されてしまったら、そこから逃げ出すことはできません。
腎臓病は糖尿病や動脈硬化、内臓脂肪過多による肥満などさまざまな生活習慣病と密接な関係があるため、早い段階で気づくことが大切。初期症状を見逃さないためには、腎臓には日々負担がかかっていることを念頭において、どのような自覚症状があったら病院に行くべきか、セルフチェックできるようにしておくことが重要なポイントとなります。
腎臓病にはあまり自覚症状がないと説明してきました。ですが、典型的な初期症状として挙げられるのが、起床時のむくみと尿の異変です。
日常生活のなかで足や手、顔がむくむ原因は前日の食事や飲酒、寝不足や同じ姿勢を続けるなどさまざま。そんななかでいちばん腎臓病を疑うべきは「起床時にまぶたなどがむくむ症状が毎日続く」状況だといわれています。
むくみとは、体内の塩分や水分のバランスが崩れることで起こる現象です。腎臓が正常に働いていれば体内の塩分がきちんと排出されるため、長時間むくみがつづくことはありません。逆にいうと、心当たりもないのに長時間、または定期的に身体がむくんでいる場合、腎臓の機能が弱っている可能性が高いということになります。
一般社団法人日本腎臓学会の各種「診療ガイドライン(※)」においても、むくみは腎臓病の代表的な初期症状として認められています。
参考:『日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン』日本腎臓学会
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php
このようなむくみは、腎臓病のなかでも急性糸球体腎炎やネフローゼ症候群などに限られているようです。もちろん、疑わしく思ったら自己判断せずに病院で検査を受けてください。
尿の異常についても自己診断は禁物。自分でチェックできる内容としては、毎回尿が泡立ち、その泡がなかなか消えない場合などは尿に蛋白が出ている可能性が高いです。また、普段どおりに過ごしているのに尿の色が茶色っぽかったり、コーラのような色だったり、ワインのように赤茶色っぽかったりしたら要注意。
腎臓でうまく尿が濾過されず、血液中の赤血球が尿に含まれたまま出ている証拠です。尿路結石などによる物理的な出血や膀胱がんなどの可能性もあるため、血尿が出たら身体の異常を疑う必要があります。
すぐに腎臓内科か泌尿器科がある病院で検査を受けましょう。できれば異変を感じた尿をコップにとっておき、その尿を検査してもらうとよいと思います。
ちなみに強度の高い運動をしたあとなどは尿の色が濃くなることもありますし、サプリメントの摂取などによって尿の色が変わることもあります。自分のライフスタイルと尿の色を紐づけて、毎日観察する習慣をつけることをおすすめします。
自分の尿の状態をより客観的にチェックしたいという方は、尿糖や尿たんぱく、尿潜血の度合いをチェックできる試験紙が市販されているので、自宅に常備しておきましょう。できれば、尿糖、尿たんぱく、尿潜血すべてをチェックできる試験紙を使うのがおすすめです。費用の関係で3種のチェックが難しい場合、尿糖と尿たんぱくのチェックにしぼりましょう。
実は、上記の日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」によると、人工透析を受けている43.7%が「糖尿病性腎症」を患っています。
腎臓は、糖やたんぱく質を消化する過程で生まれた人体にとって不要な物質を濾過する臓器です。糖尿病になると血液中の糖が増え、食事制限で糖質を含む食事を避けるようにすると、たんぱく質や脂質多めの食事になります。糖やたんぱく質が腎臓の負担を大きくした結果、糖尿病から腎臓病も併発してしまうのです。
現在糖尿病の人、糖尿の疑いがある人もふくめて、腎臓病の初期症状を見逃さないように日頃から準備しておく必要があります。
腎臓病の初期症状として、「尿量の変化、頻度の変化」があることも知っておきましょう。通常、人間は1日に1Lから1.5Lの尿を出すとされています。尿の頻度や量は、脳から出る尿量を調節するホルモンと人体の濾過装置である腎臓のバランスで決まります。しかし、腎臓の機能が低下するとこのバランスが崩れ、
といった身体の異常が出るのです。
腎臓は体内の水分量を一定に保つ働きをもっているため、病気でなければ取っている水分の量とトイレの回数、尿の量はある程度釣り合います。水分をたくさんとった覚えもないのに何度もトイレに行きたくなる、水分をとっているのに尿が出ないといった尿量や頻度の変化があれば、腎臓病を疑いましょう。
以下のような症状が現れているときは、腎臓病以外にもさまざまな病気が隠れている可能性があります。できれば大きな病院に行って血液検査と尿検査を受けるようにしましょう。
可能なら、尿やむくみといった症状が出ていなくても年に1度は精密な尿検査を受けて腎臓の機能に問題がないか確認することをおすすめします。
※あくまで腎臓病における初期症状の目安としてピックアップしたものです
腎臓病は高齢者だけがかかるもの、という認識をもっているとすればそれは誤りです。20代でも感染症や免疫疾患が続くと腎臓に負担がかかって腎臓病になることがありますし、中年世代は糖尿病や肥満などの影響を受けて腎臓病になる場合もあります。
さらに、高血圧や動脈硬化も腎臓病を呼び込む疾病です。いずれにせよ、初期症状を自覚したらまず腎臓内科や泌尿器科を受診することが最優先。そして、腎臓病の疑いや初期症状を自覚するようになったら、真っ先に見直さなければならないのが食生活です。
腎臓に負担をかけるたんぱく質と塩分を控える食事にしなければなりませんが、カリウム(ミネラルの一種で通常はその9割が尿として排出される)を含む食品の摂取も、腎臓病のタイプや病状によっては制限する必要があります。
腎機能が低下することによりカリウムの排出ができなくなり、高カリウム血症の危険性が高まります。これにより、不整脈や心停止など深刻な状況に追い込まれる可能性も出てくるのです。腎臓病と診断された場合は医師の指示に従い、たんぱく質や塩分、カリウム、リン、水分などが制限していくことになりますが、腎臓病の種類によって制限される量なども異なります。
いままで生きてきたなかで、どの食材にどのような栄養素がどれくらい含まれているか、意識しながら食事をしてきた人はいないと思います。いきなり腎臓を守るためにたんぱく質や塩分、カリウムを制限してコントロールしましょう、と言われてもなかなか実行に移すのは難しいものです。
食べたいものが食べられなくなるくらいなら、このまま病気が進行してもかまわない…などと最初からさじを投げてしまう人もいるかもしれません。腎臓病はいったんかかったら完治することは難しく、それ以上腎臓の状態を悪化させずに現状維持に努めることが治療のひとつとなります。食生活の見直しは避けては通れないというのが現実です。具体的な食事療法の内容については、下記ページに成分ごとの注意点などをまとめました、管理栄養士の宮澤さんからのアドバイスもありますので、ご覧いただければと思います
治療法のひとつである食事療法には、大きく分けて2つの方法があります。
※画像はイメージです
たんぱく質の量と総エネルギー量のバランスをとりながら塩分を減らしていく方法。具体的には、「低たんぱくごはん」や「低たんぱくうどん」(※1)などを利用しながら、塩分調整用の調味料(減塩しょうゆや減塩みそ)、中鎖脂肪酸オイル(※2)を活用します。
※1:たんぱく質を調整するために含有するたんぱく質量を極端に少なくしてあるごはんやうどん
※2:たんぱく質制限にともなうエネルギー量不足を補填するために使う
入院中は病院で腎臓にやさしい食事を提供してくれます。ただし、退院後は専門家にアドバイスしてもらいながら献立を考え、毎日腎臓病食をつくっていかなければなりません。
医歯薬出版の『腎臓病の食品交換表』などを参照しながら工夫していくしかありませんが、家庭の主婦にとってかなりの負担になっているのが現実でしょう。
※画像はイメージです
療養食や健康管理食の宅配サービスを上手に利用する方法。薬物療法を継続しながら、自宅療養や普段どおりの生活をする際に活用します。
3食すべてを制限食にするというよりは、夕食や昼食を制限食に置き換えることによって、食事をつくる手間や労力を軽減することができます。宅配サービスを提供している会社によって、食材へのこだわりや配送地域、冷凍食なのか冷蔵食なのかなど違いがあります。
いずれにしてもたんぱく質や塩分はもちろんのこと、病状に合わせて栄養成分と含有量を調整したお弁当が手軽に食べられるので、かかりつけ医や病院の管理栄養士から食事宅配を薦められるケースもあると思います。
たんぱく質制限食などの食事宅配サービスを利用する際は、公式サイトや電話で次の点を確認するようにしましょう。
宅配サービス業者によっては、専門家に相談することもできます。献立のバリエーションや価格のほかにも、専門家のアドバイスや食材へのこだわり、配送に関してきめ細やかな配慮ができているかなど、いくつもの角度から検討してみるとよいと思います。
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