血液ろ過透析(オンラインHDF)とは、一般的な血液透析にさらにろ過作業を加えた透析方法です。透析中に点滴で大量の水分(補充液)補給を行っていくことで、通常の血液透析では除去されにくかった大きい老廃物がろ過ができるようになり、血液中の毒素の除去効率がさらに高まるといった特徴を持っています。
それでは、血液ろ過透析(オンラインHDF)によるメリット・デメリットについて、ご紹介していきましょう。
血液中の毒素の除去率が高いとされている血液ろ過透析(オンラインHDF)には、下記のようなメリットがあるといわれています。
血液ろ過透析(オンラインHDF)の最大のメリットと言われているのが、通常の血液透析では除去しきれない、大きな老廃物をろ過し除去することが可能になったという点です。この効果により、透析アミロイドーシスの原因とされているβ2マイクロフロブリンなど、さまざまな種類の小分子蛋白質の除去効率が良くなり、手根管症候群、臓器へのアミロイドの沈着、破壊性脊髄炎などといった合併症の予防が可能となります。
また透析を導入している患者さんの中には、関節痛やかゆみなどに悩まされる方が少なくありませんが、このような症状も通常の血液透析では除去が困難だった毒素が要因とされていますので、オンラインHDF治療では改善傾向がみられるそうです。
血液透析を行っている最中に、血圧が低下する、気分が悪くなる、足がつる、といった不快な症状を起こすことがあります。こういった不快症状も、血液透析による合併症の一つとして挙げられています。
血液ろ過透析(オンラインHDF)治療には、こうした症状が起こらないようにする効果も期待ができるとされています。そのため、現在起こっている合併症による症状の改善とともに、将来発症するかもしれない合併症予防にも、血液ろ過透析(オンラインHDF)は有効であるといわれています。
血液ろ過透析(オンラインHDF)を受けることによるデメリットには、下記のようなものが挙げられています。
血液ろ過透析(オンラインHDF)では、透析中に大量の補充液を点滴で血液中に注入していきます。そのために重要となるのが、補充液の水質管理です。
日本透析医学会では、「特殊なフィルターを使って細菌や有害物質を取り除く」「定期的に水質検査を行い、補充液が無菌かつ無毒であることを確認する」といった、オンラインHDF治療を行うための水質基準を定めています。つまり、こうした基準を満たせる機器や環境が整っている施設でなければ、安全なオンラインHDF治療は受けられない、ということになります。
除去効率が高くなっている反面、アルブミンなどの生体にとって重要である蛋白質まで、除去されてしまう可能性があると指摘されています。またその一方で、小分子の老廃物の除去率が悪くなる、というデメリットも挙げられています。
以前は「透析アミロイドーシス」「透析困難症」の方のみが、オンラインHDF治療の適応疾患に定められていました。ですが、2012年の改定でこの枠が解除され、すべての透析患者が対象となりました。末期の腎不全患者はもちろん、若年透析患者への合併症対策での適応が増え、これまで治療困難だった皮膚掻痒症、むずむず脚症候群、といった病状の方にも、適応するとされています。
※出典
(メディプレス)血液濾過透析(HDF)のメリットとデメリット
https://dialysis.medipress.jp/disease-and-cure/dialysis-basic/8
私は長年、より多くの老廃物を除去できるオンラインHDFを続けてきましたが、平成22年度の診療報酬改定時にHDFの保険点数が設定され、それに伴ってHDF用の機器が認可のものだけに限定されることになりました。当時、私が通っていた透析施設にはその機械がないという理由で、その年の10月にオンラインHDFが中止されました。
それから2か月経ったころからかゆみが出始めました。そのうち血圧が上がり、血液中のヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)の値が下がってきて、これを改善するためのエリスロポエチン製剤を増やしてもなかなか改善されず、周りのみんなには「顔が黒くなってきた」と言われるようになってしまいました。血流を増やしたり、時間を延ばしたりしてもあまり効果がなく、1年半が経過した平成24年5月、このままではだめだと思い、37年間通った施設からオンラインHDFができる別の施設に移ることにしました。
再びオンラインHDFに戻って2か月目ころからかゆみが少なくなってきました。その後は血圧が安定し、ヘモグロビンやヘマトクリットも上昇してエリスロポエチン製剤はいらなくなりました。最近では、職場の同僚も「皮膚の色が良くなって、すべすべしてきたね」と言います。体調も良く、全国を飛び回っています。個人的な意見ですが、オンラインHDFに変わって良かったなと思います。
(60歳 男性)
※出典・http://www.zjk.or.jp/jinyuukai/experiences/dialysis-treatment/index.html
※体験談はあくまでもひとつのケースであり、個人によって効果や状態は異なります。
<参考文献>
日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php
透析治療ガイドライン
https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html
優人クリニック公式サイト
http://yujinkai.net/treatment/onlinehdf/
医療法人さとう記念病院公式サイト
http://www.satoukinen.or.jp/onlinehdf.html