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透析中の合併症と対策

透析治療が必要な腎臓病の合併症

腎不全など、透析治療が必要な腎臓病患者さんには、下記のような合併症が発生する危険性があります。

腎性貧血

腎臓には本来、造血ホルモンであるエリスロポエチンを生産する機能が備わっていますが、透析患者さんの腎機能は低下しているため生産が滞り、エリスロポエチンが不足するため貧血となってしまいます。

腎性貧血を発症すると、疲れやすくなる・動機・息切れ・食欲不振・倦怠感などといった症状が現れます。この腎性貧血の治療法としては、「ヒトエリスロポエチン型製剤」を駐車するという方法が用いられます。

感染症

透析患者さんは免疫力が低下しているため、様々な感染症にかかるリスクが高いことが報告されています。

例えば穿刺部から細菌が侵入することで起こるシャント感染、尿量が少ないために起こる尿路感染の他にも、肺炎やウイルス性肝炎などが、主な症状として挙げられています。感染症にかかりそれが重篤化してしまうと生命にも関わりますので、シャント部は常に清潔を保つことや、栄養を十分に摂るようにするなどといった予防をしっかりとしていきましょう。

高カリウム血症

腎機能の低下している透析患者さんが、カリウムを多く含む食品を摂りすぎると発症する合併症です。

症状としては、手足、口のしびれや脱力感・知覚異常・味覚異常・不整脈といったものが挙げられ、特に血中のカリウム値が上昇することで起こる不整脈は、新機能が停止する可能性も指摘されています。そのため、食事によるカリウム制限や十分な透析を行うことで、合併症の発症を予防することが重要となります。食事制限でもカリウム値が下がらない場合は、薬の服用で値を下げていきます。

高リン血症

腎機能が低下すると、カリウム同様リンの排出も低下し、血液中に多く溜まってしまうことで起こる合併症です。高リン血症を発症すると、血管を石灰化させ動脈硬化を発生させることが報告されています。

また、高リン血症になると副甲状腺ホルモンが過剰分泌されるため、骨をもろくさせる「二次性副甲状腺機能亢進症」の発症につながります。これを予防・治療するためには、リンを多く含む食事を控える食事療法とともに、リンを便と一緒に排出させるための薬物療法が挙げられています。

透析そのもので起きる合併症

透析治療を導入することで起こるとされる合併症には、下記のようなものが挙げられています。

不均衡症候群

透析を行うことで血液中の老廃物や水分は急激に減少しますが、そのことにより血管内と外の細胞の間で水分や成分濃度に大きな差(不均衡)が生じてしまいます。すると、頭痛や腹痛・吐き気・嘔吐・筋肉のけいれんといった症状が透析終了後12時間以内に起こる、「不均衡症候群」を発症する可能性が高まります。

通常では多くなった細胞の成分や水分が血管内に入り、この不均衡を小さくするような作用が働きますが、まだ透析を始めて間がなく体が透析になれていない導入初期では、この働きが十分に機能しません。

そのため、体内で不均衡な状態が続いてしまい、「不均衡症候群」を発症しやすくなるとされているのです。体が透析に慣れてくると症状は起こりにくくなりますが、水分や塩分、たんぱく質の制限を守ることで透析の効果を穏やかにする、透析時間を長くして不均衡を起こりにくくする、という予防法もすすめられています。

高血圧・低血圧

透析患者さんに最も多く見られる合併症が、高血圧や低血圧です。まず高血圧は、透析を始めたときに良く現れる合併症で、摂りすぎた水分や塩分が十分に排泄されずに、体液のバランスが過多になってしまうことが要因とされています。高血圧症は、動脈硬化や心臓病、脳卒中(脳出血)の発症にも関わりますので、十分な対策が求められます。高血圧を改善するためには、体重の増加に気を付けることと、水分や塩分の摂りすぎに注意するようにしましょう。

もう一方の低血圧ですが、透析での除水による循環血液量が減少することが要因として挙げられており、長期間透析治療を続けることで、次第に低血圧に移行することもあります。症状としては、あくび・吐き気・嘔吐・頭痛・動機・冷や汗・倦怠感・めまいといったものが挙げられていますが、無症状の場合もあるそうです。対策としては、ドライウェイトを上げる・透析時の除水量を少なくする・バランスの良い食事をとる、といったものがすすめられています。

透析アミロイドーシス

透析アミロイドーシスは、透析治療を長期間続けていくことによって、徐々にβ2-ミクログルブリン尿毒素が体内に蓄積され、それがアミロイドという繊維物質になり骨や間接に付着していってしまう合併症です。

主な症状としては、手の付け根・肩・首といった部位にしびれや痛みが生じ、関節がスムーズに曲がらなくなるなどといったものが挙げられています。十分な透析を行うことがこの合併症の予防法となり、発症後の治療としては、症状を抑える薬物療法や外科的な手術も選択肢に入ってくるそうです。

シャント・トラブル

透析治療を継続していくことで、シャントが狭窄や閉塞を起こす可能性があります。このようなシャント・トラブルが起こると、血液がスムーズに流れることができず、透析治療が正しく行われなくなってしまいます。シャントの狭窄が疑われる場合は、血液の流れを良くする薬の使用や、カテーテル治療で血管を拡張させることで、トラブルを解決していきます。


<参考文献>

日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php

透析治療ガイドライン
https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html

日本腎臓学会 透析導入と主要合併症
https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/45_2.pdf

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