たんぱく質、塩分、カリウムなど、食事制限が厳しいという印象が強い腎臓病ですが、アルコールの摂取に関しても制限があるのでしょうか?腎臓病とアルコールの関係についてQ&Aでお答えします。
腎臓病は食事制限が多いことから「お酒もダメなのではないか」と疑問に思う方も少なくないと思います。しかし、腎臓病にはアルコール摂取に関する制限はありません。お酒に含まれるたんぱく質はわずかな量なので腎臓にはあまり影響がないからです。
適切な量であれば、健康な人と同じようにお酒を楽しんでいただいても問題ありません。
ただし、お酒を飲んではいけない、また、飲み方に気をつけなければいけないケースもあります。それは、「アルコールを禁じられている他疾患がある患者さん」です。腎疾患との合併症を発症している人、特に糖尿病性腎症などのケースは注意が必要です。
アルコールは肝臓疾患を悪化させます。肝臓疾患のある方は飲酒厳禁です。
飲酒によって血糖値をうまくコントロールできなくなるリスクがあります。アルコールは低血糖を起こしやすいので、腎機能が下がっていると禁酒が必要な場合もあります。
アルコールによる血圧上昇は、腎臓にダメージを与えます。アルコール自体が降圧薬の効果に影響をおよぼすこともあるので要注意です。
他疾患がある、腎臓病が進行している場合は、お酒を飲んでよいかどうか、必ず医師に相談するようにしてください。
病気のときの飲酒は体に悪いというイメージがありますが、じつは意外にも、「適量のアルコール摂取は腎機能によい働きかけをする」というデータが報告されています。
また、アルコールをまったく飲まない人と比較して、1週間あたりのアルコール摂取日が多い人ほどeGFRが高い(腎機能がいい)という報告や、少量から中等量のアルコール摂取は腎臓に対して保護的に働く可能性があるという報告もあがっています。
一方で、1日4杯以上のアルコールを摂取すると、慢性腎臓病を発症する可能性が高くなるという結果も出ているので、やはり飲み過ぎは禁物です。
アルコール摂取と腎臓病の関係についてはいまも研究中で、まだ判明していないこともたくさんありますが、こうした調査結果を見ると、腎臓病でも病気のことはあまり気にせず、お酒を多少たしなんでも大丈夫といえるでしょう。
詳細を確認したい人は、日本腎臓学会作成の診療ガイドライン『エビデンスに基づく診療ガイドライン2013』がWEB上に公開されていますので、そちらをご覧ください。
出典:一般社団法人日本腎臓学会『エビデンスに基づく診療ガイドライン2013』内「第2章CKDと生活習慣」
https://www.jsn.or.jp/guideline/ckdevidence2013.php
厚生労働省が推進する国民健づくり運動「健康日本21」によると、節度ある適度な飲酒量は1日平均、純アルコールにして約20g程度であるとされています。
さきほどあげた日本腎臓学会の報告を見ても、1日あたりのアルコール摂取量は20g程度に抑えるのが望ましいと思われます。
■酒類別のアルコール約20gを含む量
出典:「酒類別のアルコール約20gを含む量」(サッポロビール株式会社)
http://www.sapporobeer.jp/tekisei/kenkou/susume.html
ビール、日本酒、ワインなどの醸造酒には、たんぱく質、カリウム、リンが含まれているので、それらの摂取制限がある人は注意が必要です。蒸留酒は逆に、たんぱく質、カリウム、リンがほとんど含まれていないのでおすすめです。
ただし、蒸留酒を割って飲むときは、割り材の種類に注意しなければいけません。ジュースやお茶のようにカリウムが含まれているもので割るのは避け、炭酸などにするほうがよいでしょう。
アルコールに含まれる成分はお酒の種類によって異なります。たとえば日本酒には1合あたり0.7gのたんぱく質が含まれますが、白ワインならグラス1杯0.1g、焼酎であれば1合0gという感じです。
下記サイトにお酒の種類別成分一覧が載っていますので、詳しく知りたい方は下記をクリックしてください。
出典:「慢性腎臓病(CKD)と飲酒 主なアルコールの成分」(じんラボ)
http://www.jinlab.jp/support/life_5eating_1ckddrinking.html
腎臓病で水分制限を受けている患者さんの場合、水分の多い(薄めの)お酒を飲むときはお酒を飲水量として換算することも重要です。ビールや酎ハイなどは想像以上にたくさんの水分を摂ってしまうので注意するようにしましょう。
また、お酒と一緒に摂るおつまみにも気をつけてください。おつまみには高たんぱく、高塩分のものが多いので、1日の摂取量を超えないよう、低たんぱく、低塩分のメニューを選ぶようにしましょう。
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