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腎臓が発する痛みとはどのようなもの?

背中や腰、脇腹、下腹部に原因不明の痛みを感じたら、腎臓になんらかの問題がある可能性があります。腎臓が発する痛みはなんのサインなのか、具体的にどのような病気が考えられるのかについてご紹介していきます。

その痛み、腎臓が原因かもしれません

なんとなくお腹の奥のほうが痛い、わき腹や腰が痛い。そう感じてもまさか腎臓が悪いとは思わないでしょう?じつは、腎臓は腰の少し上あたりに左右1つずつあるのですが、胃などほかの臓器同様お腹側にあると思い込み、その痛みが腎臓と結びつかず、ただの腰痛や背中の痛みと勘違いしてしまうことが多いそうです。

腎臓は非常にがまんづよい臓器なので、胃痛のように普段痛みを感じることはありませんが、腎臓自体が何かの理由で腫れるなどの症状が出ると、激しく痛みを感じることがあります。

腎臓の位置は脇腹と背骨の中間、横隔膜の下の背中側と言えばわかりやすいでしょうか。腰が痛いときに背中を叩くことがあると思いますが、ちょうどその叩いているあたりです。

腎臓は腎被膜(じんひまく)という膜に囲まれています。腎臓が何らかの病気によって腫れを起こしていると、腎被膜は内側から外側へと圧迫され、膜が引き伸ばされるため痛みがでてきます。では、その何らかの病気とはどのようなものが挙げられるのか、具体的にみていきましょう。

腎臓が痛みを発する病気の例1:尿管結石

腎臓から尿が運ばれる経路に石(結石)ができてしまう病気で、患者は中年以上の男性が多い傾向です。

なぜ男性に多いのかというと、男性は人体の構造上女性よりも尿管が長いからだといわれています。日本泌尿器科学会が定める「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版※」によると、尿管結石罹患者の男女比は「2.4:1」と圧倒的に男性が多く、生涯罹患率は男性の「15.1%」に対して女性が「6.8%」です。おおざっぱにいって、男性は7人に1人が尿路結石になる計算になります。また、治療をしても再発率が高い病気です。

※参考:『尿路結石症診療ガイドライン 2013年版』日本泌尿器科学会ほか
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf

結石ができると尿管や腎盂を塞いでしまうため、尿路の上流部分にある腎臓や腎臓側の尿管、腎盂に尿が溜まってしまいます。このため、腎盂の内圧が上昇し、腎臓が引き伸ばされることで腎被膜も延ばされ、痛みが生じるのです。

ちなみに、腎で生まれた結石は排尿の流れに乗って腎盂、尿管、尿道と移動していき、結石がある場所によって「腎結石」「尿管結石」といったふうに病名が変わります。

さきほどのガイドラインによると、尿管結石の96%は上部尿路結石(腎結石や尿管結石)で、膀胱や尿道といった下部の尿路からはじまる下部尿路結石は非常に数が少ないです。

痛みを感じる部位は背中や脇腹、腰、下腹部あたりで、急激に引き伸ばされると非常に強い痛みを感じます。また、痛み以外に血尿、吐き気、嘔吐、発汗などといったサインが現れることもあります。

尿管に詰まる結石は非常にトゲトゲした形をしており、尿管や尿道を移動するさいにトゲが引っかかった場合、意識が朦朧とするほどの痛みを発することも特徴です。

結石のサイズや位置によっては痛みがあまりなかったり、痛みを感じてもある程度の時間で治まったりする場合もあります。結石を直接溶かす薬は開発されていないため、結石が尿道を通って自然排出されるまで水分をたくさん取って我慢するか、結石の場所によっては外科手術で結石を砕かない限り痛みはなくなりません。

なお、尿管結石の原因は次のようなものが考えられます。

  • 血液中のカルシウムが高濃度
  • 動物性タンパク質の過剰摂取によるシュウ酸、尿酸の増加

腎臓が痛みを発する病気の例2:尿管狭窄

尿道狭窄は尿道が狭くなった状態のこと。尿道が狭くなってしまうことで、尿がでづらくなる、でるのに時間がかかるなどの排尿の障害を引き起こします。症状が重症化すると自力での排尿ができなくなってしまうため、早期の発見と治療が大切な病気です。患者は主に男性で、先天性のものと後天性のものがあります。

  • 先天性尿道狭窄
    胎生7週の頃に破れて開口する尿生殖膜が残ることが原因と考えられており、尿道が狭窄することで尿の流れが乱れ、膀胱炎などを発症する可能性が高まります。
  • 後天性尿道狭窄
    骨盤骨折や打撲といった何らかの外傷によって尿道に傷ができてしまい、傷が治る過程で生じた尿道組織の瘢痕が原因で尿管が狭くなった場合が多いです。
    人間には傷ついた場所を修復する機能が備わっています。このとき、傷口が開いていると傷ついた面をくっつけてすぐ修復することができないため、とりあえず隙間のあいた場所を埋めるために「肉芽組織」とよばれるパテのようなもので傷口を埋めるのです。
    この組織が線維化や瘢痕化によって硬くなってしまった結果、「傷口を埋めて外傷を治すはずが、大きくなりすぎてしまい尿道を圧迫」してしまう後天性の尿道狭窄につながります。症状が重い場合、常にカテーテルを通していないと排尿ができません。物理的に尿道が狭くなってしまっているため排尿に時間がかかったり、残尿感が残ったりと排尿が難しくなります。
    尿管狭窄による痛みは尿管結石の場合と同様で、腎臓、腎被膜が引き伸ばされることで痛みが生じます。
    一旦狭くなった尿道は時間経過によって自然治癒でもとの広さに戻ることはないので、症状が進行しないうちに病院で適切な治療を受けることが大切です。なにより、放置しておくと尿路感染症や腎盂腎炎を発症する可能性があります。

腎臓が痛みを発する病気の例3:腎孟腎炎(じんうじんえん)

腎盂腎炎は、片方もしくは両方の腎臓に細菌が感染して起こる炎症、細菌感染症のこと。腎盂は腎臓内の尿が溜められる部分で、腎でつくられた尿は腎盂から尿管へと排出されます。腎盂腎炎は、細菌感染の影響でこの腎盂まで炎症が起こってしまった状態です。男性と比べて女性の方が尿道が狭く、尿道口と肛門が近いために尿道に菌が入り込みやすいことから、主に女性がかかりやすい病気です。とくに、閉経後の女性はさまざまな尿路感染症のリスクが高まることが知られているため、日頃から気をつけておいたほうがよいでしょう。

腎盂腎炎は、急性腎盂炎と慢性腎盂炎の2種類に分類されます。痛みの内容は急性、慢性によって違うので以下でご紹介します。

  • 急性腎盂腎炎
    腎臓内へ細菌が侵入してしまい、腎臓が炎症を起こしている状態です。症状は突然現れ、早期治療を行えば3~5日で症状が落ち着きます。「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015※」によると、その他の病気を併発していない腎盂腎炎のみを患った場合の痛みは腎臓の炎症に伴って生じ、背中の腎臓のあたりを叩くと激しい痛みを感じる特徴があります。
    また、全身性の強い倦怠感や発熱、悪心、嘔吐なども代表的な症状です。腰や脇腹の痛みとともに、吐き気やふるえを感じたら急性腎盂腎炎を疑いましょう。
    ※参考:『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』一般社団法人日本感染症学会ほか
    http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf
  • 慢性腎盂腎炎
    他の疾患の影響により、慢性的に腎臓が炎症を起こしている状態です。
    悪寒や体の倦怠感、高熱、吐き気など、風邪のような症状がでる場合もありますが、背中、腰の痛みに加え、膀胱炎の症状でもある残尿感、頻尿、血尿・白濁尿などが起こる場合もあります。
    急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎のもっとも大きな違いは、痛みや諸症状の重さです。急性腎盂腎炎の場合、全身のふるえや吐き気に伴って腰や脇腹に強い痛みがでます。しかし、慢性腎盂腎炎の場合痛みや症状の出方が軽いこともあって、病気の初期段階ではなかなか気づけないという特徴があります。
    とはいえ、慢性腎盂腎炎は急性腎盂腎炎やその他の腎臓病を繰り返している場合に罹患しやすい病気です。過去に腎盂腎炎や尿路結石、前立腺肥大症といった泌尿器関連の病気経験がある人は、普段から自分の体調を細かく管理していれば早い段階で気づくこともできるでしょう。

それって腎臓?背中に感じる痛みは違う病気かも

腎臓の病気で背中が痛む例を挙げましたが、背中が痛む原因は腎臓疾患以外の病気の可能性も大いにあります。

例えば肩こり。首筋や首の付け根、肩、背中にかけて張ったり、凝ったり、痛みを感じるという症状は多くの人が経験していると思います。またさまざまな原因で腰痛を感じている人も多いでしょう。

みぞおちの下からへその上の部分と、その背中側に痛みを感じている場合は、すい臓が原因の可能性もあります。背中の痛みは、すい炎、すい臓がんによる痛みの症状としても挙げられています。特に立っていられないほどの激しい痛みの場合は急性すい炎が疑われます。

背中側の特に左肩部分の痛みは狭心症、胸や背中の真ん中部分(肩甲骨の間)に激しい痛みが起きた場合は急性大動脈解離と、命にかかわる病気から生じている痛みである場合もあります。

基本的に、転んでけがをしたなどの覚えがない突発的な痛みは、場所を問わず病気が原因になっている可能性が高いです。腎臓病に関しては「腰や脇腹が痛くなったら病気かもしれない」という考えをもっておき、少しでも痛みを感じたら病気の発症を疑いましょう。

問題は痛みや初期症状のでない病気です。腎臓の場合、慢性腎盂腎炎や慢性腎臓病が当てはまります。慢性の病は、尿検査や血液検査等で病気の有無を確認するのが一番です。

ちょっとした痛みでも、大きな病気が隠れている場合がありますので、早期に医療機関を受診するようにしましょう。

どの病院に行けばよいかわからないときは、泌尿器科や腎臓内科のある総合病院でまず血液検査や尿検査を受け、腎臓疾患が原因ではないとわかったら、整形外科などほかの診療科で受診するとよいと思います。

NHKスペシャルでも取り上げられていたように、腎臓は人体の情報ネットワークのかなめ。腎機能を低下させない食事のコツを覚えるなど、できることから実行していくことが大切です。腎臓のあたりに痛みを感じている人や健康診断でクレアチニンの数値が高かったという人は、以下のコンテンツも読んでみてください。

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