腎臓病とかしこく付き合うために
腎臓病と診断された人やその家族、腎機能の低下が気になる人に向けて、腎臓の働きや腎臓病の種類といった基礎知識と、慢性腎臓病(CKD)治療の核ともいえる食事療法についてくわしく調べてまとめました。
CKDは初期症状が非常にわかりにくいことから年々患者が増加していて、じつに成人の8人に1人がかかるともいわれている新たな国民病。腎臓病は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と密接な関係にあることから、腎臓病を予防するためにはまず、食習慣や生活習慣の見直しが必要になってきます。
腎臓病と診断された人やその家族、腎機能の低下が気になる人に向けて、腎臓の働きや腎臓病の種類といった基礎知識と、慢性腎臓病(CKD)治療の核ともいえる食事療法についてくわしく調べてまとめました。
CKDは初期症状が非常にわかりにくいことから年々患者が増加していて、じつに成人の8人に1人がかかるともいわれている新たな国民病。腎臓病は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と密接な関係にあることから、腎臓病を予防するためにはまず、食習慣や生活習慣の見直しが必要になってきます。
腎臓病とは体内の老廃物をろ過し、尿として排泄する重要な役割を担う腎機能の低下により発症する病気です。
腎炎などのように腎臓の部位そのものに問題がある原発性のものと、糖尿病性腎症のように糖尿病など他の病気との合併症である続発性のものがあります。急性糸球体腎炎のように、急に発症する場合は治療による完治も可能ですが、長年酷使してきた腎臓そのものに炎症や傷害が起こる慢性腎臓病(CKD)を発症した場合は、腎臓病と生涯つきあっていくことになります。
NHKスペシャル「人体」の第1回(2017年10月1日放送)では「“腎臓”があなたの寿命を決める」と題して、腎臓が尿を作るだけの臓器ではなく、人体の情報ネットワークのかなめであり、また脳や心臓に引けをとらない重要な仕事をたくさんしているスーパースターであると紹介されていました。腎疾患のみならず、心臓疾患や高血圧の治療のために腎臓のオペを行なう最先端医療がクローズアップされ、世界中の医療界より腎臓に対する注目が集まっているのだそうです。
それほど重要な働きをしている腎臓ですが、入院して薬物療法などの治療を受けたとしても腎機能が正常な状態まで回復することはないため、腎機能がいま以上に低下しないように食事療法でたんぱく質や塩分などを制限して、これ以上腎臓に負担がかからないようにしなければなりません。そのまま放置すれば病気が進んで透析療法や腎移植という治療法しか選択肢がなくなってしまいますが、初期の段階で薬物療法や食事療法を適切に行なえば腎臓病の悪化を防ぐことはできます。医療機関で食事療法の指導を受けつつ、食事療法を継続していく必要があります。
腎臓病の初期段階には、自覚症状がほとんどありません。腎臓の機能が低下しているのに10年以上も無症状のまま経過してしまう、というケースも少なくありません。たとえば会社の健康診断で尿たんぱくが陽性と出たとしても、「健康状態はいいし病院に行って再検査するほどではないだろう」と慢性腎臓病(CKD)の初期症状を見過ごしてしまう人がとても多いのです。
腎臓病末期患者に関する調査データによると、日本は透析患者数世界第2位であることが日本透析医学会の統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況」(2015年12月時点)でも発表されています。第1位は台湾、第3位がアメリカ、第4位がシンガポール、そして第5位が韓国と、2位のアメリカ以外はアジア圏であることがわかります。
中国でも1億2,000万人がCKDに罹患、そのうち100万人もの患者が末期の腎不全であるともいわれており、インドでも同様に透析患者数が急増しているのだそうです。経済的な豊かさは生活の質を高めることにもつながりますが、同時にCKDのような新たな生活習慣病も生み出しているというのが実情です。
いったんCKDと診断されたら完治することはなく、自覚症状が現れた時点で病状がかなり進行している可能性があります。健康診断で腎機能低下の所見が出なくとも、一度ご自身の生活習慣を振り返ってみるべきです。たとえばストレスの多い生活、外食やジャンクフードなど偏った食生活を送っている場合、知らず知らずのうちに腎臓への負担が蓄積され、いつの間にか慢性腎臓病を発症している可能性があります。
初期の腎臓病を見逃さないためには、症状がないからといって油断せず、健康診断などで定期的に尿検査や血液検査などを受け、腎機能の低下を見逃さないことが肝要。そして少しでも気になる数値が出たら、泌尿器科や腎臓内科でしっかり検査をしてもらうことを強くおすすめします。初期症状のうちに薬物療法や食事療法などの温存療法を受ければ、これまでどおりの生活が維持できるはずです。
一口に腎臓病と言っても、症状や原因が異なる様々な種類の疾患があるのをご存知でしょうか。
代表的なものとして、糸球体腎炎などの急性または慢性の腎炎、IgA腎症やネフローゼ症候群、最近特に増えている糖尿病腎症などが挙げられます。
それらの腎臓疾患が進行して腎機能が低下してしまうと、急性または慢性の腎不全と言われる状態になってしまうわけです。ちなみに腎不全とは、病気を表す名称ではなく、腎臓疾患によって機能低下を起こした腎臓の状態を表す用語です。末期の腎不全になると、人工透析や腎移植という選択肢しかなくなってしまいます。
腎臓病には大きく分けて「急性腎不全」と「慢性腎不全」がありますが、それ以外にもさまざまな種類の病気があります。さらには高血圧や糖尿病、心疾患といった病気との合併症もありますが、ここでは腎臓病の種類とそれぞれの発症原因についてまとめてあります。病院で診察を受ければ病名を告げられますが、少しでも不安を感じる人はここで腎臓病の原因や対処法などの基礎知識について知っていただければと思います。
腎臓のろ過装置・糸球体に炎症が起こり、血尿やたんぱく尿がでる病気の総称。急性腎炎と慢性腎炎とがあります。急性腎炎は溶連菌感染症など最近による炎症が原因で起こり、子供に多いのが特徴。慢性腎炎はたんぱく尿などが1年以上続きます。また間質性腎炎といって薬のアレルギーによって発症するものなどがあります。
急性腎不全とは何らかの原因で急激に腎機能が低下する症状の総称で、細菌性の腎炎や抗生物質などの薬剤アレルギーが原因であることが多いです。尿の排出経路により腎前性、腎性、腎後性に分けられます。腎臓病が進みゆっくりと腎機能が低下する病気の総称を慢性腎不全といいます。回復は見込めず、最終的には透析治療が必要になります。
IgA腎症とは慢性糸球体腎炎の一種で、腎臓病患者の日本人がいちばん多くかかっている疾患です。もともと腸などの粘膜を守る免疫であるIgA(免疫グロブリンA)という蛋白が糸球体に沈着する病気で、一種の自己免疫疾患であるといえます。扁桃腺炎などの炎症性疾患や感染症が原因であると考えられています。
糖尿病性腎症は糖尿病と腎臓病の合併症です。現在、新たに透析治療を始める人の原因疾患第1位がこの病気。初期の段階では血糖コントロールと降圧療法、病期が進むとたんぱく質制限も必要になるため、食事療法で悩む患者も多いようです。透析導入を少しでも遅らせるためインスリン注射や投薬、運動療法なども必要となってきます。
プリン体が代謝されてできる老廃物が尿酸です。血液中にこの尿酸が増えすぎると高尿酸血症となり、処理しきれない尿酸が結晶化。関節などに沈着することで、強烈に痛む痛風発作を引き起こします。また尿酸結石が尿路に移動してつまると、激痛とともに血尿も出ます。痛風腎から慢性間質性腎炎、慢性腎不全へと移行する原因ともなります。
尿蛋白が1日3.5g以上、血中のアルブミン濃度が3.0g/dl以下に低下した状態で、むくみがみられる状態を総称してネフローゼ症候群と呼んでいます。高コレステロール血症をともなうことが多いです。慢性糸球体腎炎や膜性腎炎、糖尿病性腎症、関節リウマチ(膠原病の一種)なども、ネフローゼ症候群と同じような症状がでる場合もあります。
ここでは慢性腎臓病の4つの治療法について説明していきます。慢性腎不全は時間をかけてゆっくり腎臓の機能が低下していく病気ですが、その原因のほとんどは不規則な生活習慣や偏った食生活など外的要因によるもの。腎臓病治療の第一歩は、まずこの生活習慣を改善することから始まります。そしてたんぱく質や塩分を制限する食事療法、対症療法として血圧を下げるなど薬物療法も同時に行ないます。そして病期が進むと透析療法、そして最終的には腎臓移植ということになります。
腎臓病の食事療法は、腎臓に負担をかけないよう、たんぱく質や塩分、カリウム、リンなどの摂取量を制限したり、水分の摂取量に気を付けたりしなければなりません。たんぱく質を制限すると、1日に摂るべきエネルギー量が不足しがちになるため、糖質や脂質で摂取カロリーをコントロールする必要もあります。慢性腎臓病の治療でいちばん重要度が高いともいえる食事療法については医療機関で医師や管理栄養士が指導してくれますが、病院でも必ず勧められるのが腎臓病食の宅配をしてくれるサービスの活用。たんぱく質や塩分の制限食や健康管理食の宅配業者を上手に利用して、自炊の負担を軽減しながら毎日の食事をしっかり管理していくことがとても重要です。
毎日3食分家庭で腎臓病食を作るとなると、家族への負担や患者本人にかかるストレスは相当なもの。食べる喜びや楽しみなくして、命を永らえることはできません。そこで、プロの料理人が作った腎臓病食を利用して“前向きな手抜き”料理を楽しんでみてはいかがでしょう。腎臓病食の宅配や通販業者のなかから実績のある会社をいくつかピックアップして、献立の一例や各社の特徴などをまとめました。ぜひ参考にしてみてくださいね。
画像引用元:武蔵野フーズ公式サイト(http://www.kenko-webshop.jp/)
創業20年の実績と、宅配サービスにはめずらしく冷蔵食を日替わりで提供してくれる武蔵野フーズ。生産者の顔が見える食材を使用、同社の「健康宅配」では毎日8,000食を宅配しているのだそうです。
画像引用元:メディカルフードサービス(https://www.medifoods.jp/)
医療・介護食のメーカー、メディカルフーズが提供する一般家庭への食事宅配サービス「健康うちごはん」では、腎臓病食だけでなく糖尿病、高血圧、循環器系などの疾患に合わせた制限食を提供しています。
画像引用元:トラストサービス(http://www.torasuto-s.com/)
兵庫県内の地域医療期間と連携し、腎臓病食と糖尿病食を提供しているトラストサービス。神戸医師協同組合と業務提携することにより医療の現場と家庭を結び、地域住民の健康管理にも取り組んでいます。
画像引用元:ニチレイフーズダイレクト(http://wellness.nichirei.co.jp/shop/default.aspx)
冷凍食品の大手メーカー、知らない人はいませんが、腎臓病や糖尿病の食事療法用、血圧や中性脂肪が気になる人、ダイエットしたい人など様々な目的に合わせたメニューが選べます。目移りしてしまいそう!
腎臓病の食事療法は、たんぱく質や塩分、カリウム、リンなどを制限しなければいけません。とはいえ、1日の摂取エネルギー量はしっかり確保しなければならず、最初のうちは戸惑うことが多いでしょう。薄味で肉や魚もたくさん食べられず、野菜もカリウムを気にしなければならないですし、食べること自体を面倒に感じてしまう人もいると思います。
ただ、塩分制限に関しては高血圧などの血管病予防には不可欠なものですし、自分がなにをどれだけ食べていいのか、食全体をコントロールできるようになれば、ある意味生活習慣病の予防にも大いに役立ちます。さらに食材選びと調理のコツさえ覚えてしまえば、減塩レシピでもおいしくいただけることを知っていただきたいと思います。それで、手軽にできる腎臓病食のレシピをいくつかご紹介しましょう。
レシピを監修してくれたのは…
宮澤 かおる
管理栄養士・健康運動指導士
聖徳大学食生活専攻卒業後、同大学の助手として勤務しながら、国家資格である管理栄養士を取得。総合病院に勤務して内分泌系の栄養指導業務を行なうなど、実績を重ねてきた。病院で栄養指導を行なうなかで運動指導の大切さを痛感、健康運動指導士の資格も取得。現在は幅広く栄養指導やカウンセリング、健康弁当の献立作成などを中心に活躍中。
たんぱく質量を制限する腎臓病食であっても、魚の種類や調理法を選べば、かなり満足度の高いおいしい食事が楽しめます。ただし魚や野菜にはカリウムが多く含まれますので、カリウム制限のある人は要注意。
少ないたんぱく質はなるべくアミノ酸を豊富に含むたんぱく質を摂るようにします。肉は赤身よりも少し脂身のある肉を使うと、少ない量でカロリーも補えます。塩分を減らすためにはだしやハーブなどを活用して。
ごはんは重要なエネルギー源ですから、しっかり必要量が摂れるようにしましょう。低たんぱく米やたんぱく質調製食パンなどの特殊食品も活用して、たんぱく質を摂り過ぎないように気をつけましょう。
エネルギー量の不足を補填するためにも、デザートや間食を昼食や夕食にプラスするとよいでしょう。洋菓子は生クリームなどたんぱく質を含むものが多いので、原材料に含まれる栄養素は事前に確認を。
腎臓病の食事療法では一日に必要な摂取エネルギー量を確保することが重要です。たんぱく質の制限によってどうしても摂取カロリーが減ってしまうという問題をどうすればクリアできるのか、エネルギーアップのコツについてQ&Aでお答えします。
たんぱく質、塩分、カリウムなど、食事制限が厳しいという印象が強い腎臓病ですが、アルコールの摂取に関しても制限があるのでしょうか?腎臓病とアルコールの関係についてQ&Aでお答えします。
NHKスペシャル『人体』の第1回目放送で取り上げられた腎臓、人体の情報ネットワークのかなめとなる重要な役割を果たしていることが繰り返し説明されていました。「寿命を決める」ともいわれるほど重要な役割をもつ腎臓の働きについてQ&Aでお答えします。
慢性腎臓病患者や透析患者の運動療法に関する疑問や、腎臓病患者にはどのような運動が向いているのかといった疑問にお答えしています。
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