腎性貧血は、一般的な貧血と違い造血に関わる腎臓の働きが大きく関わっています。腎臓の機能が低下することで起きてしまう腎性の貧血、腎性貧血について詳しくご紹介していきます。
腎性貧血は、腎不全の人に起こりやすい貧血の一種です。腎臓はさまざまなホルモンを分泌する臓器でもあり、分泌されるホルモンの1つに赤血球をつくる働きを促進する造血ホルモン・エリスロポエチンがあります。
腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌量が減り、赤血球をつくる働きも低下してしまいます。その結果、血液中の赤血球が減少。赤血球のもつ体内に酸素を輸送する働きも低下することで、貧血が進行していきます。このような貧血を腎性貧血というのです。
一般的な貧血は体内の鉄が減少し、ヘモグロビンの生産が不足することでおこる鉄欠乏性貧血です。一方、腎性貧血は上記のような腎臓の障害が原因となっています。貧血が起きたら鉄を摂るようにすればいいといわれていますが、それが通じるのは鉄欠乏性貧血の場合。腎性貧血は鉄を摂取しても改善はしません。
腎性貧血になると、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、だるさ、皮膚や唇の蒼白というような、一般的な鉄欠乏性貧血の症状が現れます。このため、鉄欠乏性貧血と誤解されたり、貧血が徐々に進行する症状のため、腎性貧血の症状だと気がつかなかったりする場合もあります。
貧血による症状に慣れてしまうことが、腎性貧血発見を遅らせる原因となるのです。気づくのが遅れると、腎性貧血を悪化させてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。
さらに、慢性的な貧血状態では体の隅々までの酸素が行き届かず、体内では酸素不足が起こります。これを補うために心臓には常に負担がかかっている状態のため、ひどい場合は末期の心不全に進行してしまう恐れもあります。
腎性貧血の診断には鉄欠乏性貧血とは異なる数値が必要です。一般的な貧血と比較し、血中のヘモグロビンの数値や、エリスロポエチンの数値を調べることになります。
■ヘモグロビン(Hb)の値
日本人の貧血の診断基準値として、一般的なヘモグロビン値は成人男性:13.5 g/dL、成人女性:11.5 g/dLとされています。※年齢、性差の考慮が必要です
■エリスロポエチン(EPO)の数値
一般的な鉄欠乏性貧血の場合、貧血時は血中のエリスロポエチンの数値は上昇していますが、貧血であるにもかかわらず、数値が低い場合はエリスロポエチンの分泌が正常に行われていないということから、腎障害が起きている可能性が高く、腎性貧血であると思われます。
腎性貧血の治療には、薬物治療、食事療法、鉄剤の投与と3つの方法が並行して行われます。
月に1~2回ほど皮下注射によって投与します。この製剤はエリスロポエチンの分泌不足を補うもので、投与することで赤血球の生成を促します。
一般的には血液の生成を促すため、タンパク質や鉄分、ビタミンの積極的な摂取が欠かせません。しかし、腎性貧血では腎臓に負担をかけるわけにはいかないため、医師や管理栄養士による食事指導が行われます。
鉄剤は赤血球の生産促進を目的として投与されます。腎性貧血の場合、残念ながら鉄剤だけを補給しても症状の改善は期待できませんが、鉄分不足は他の薬剤の効き目を低下させてしまうため、補助的な役割で使用されています。
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