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急性糸球体腎炎・慢性糸球体腎炎の原因と症状および対処法

腎臓には、糸球体と呼ばれる毛細血管の塊のような組織があります。血液から原尿を作り出すろ過装置である糸球体は1つの腎臓に100万個もあるのだそうです。もじゃもじゃと糸くずが固まったような形をしていて、その部分を通過する血液をろ過し、余分な水分や老廃物をろ過して尿として排出しているわけです。

その糸球体に炎症が起きてしまう疾患を腎炎、正式には糸球体腎炎と呼びます。

糸球体腎炎には急性糸球体腎炎と慢性糸球体腎炎とがありますが、慢性腎炎にはほとんど自覚症状がないので、定期健診の尿検査などで病気が見つかるケースが多いようです。

急性糸球体腎炎の原因と症状

急性糸球体腎炎(急性腎炎)は、お子さんに多い病気だと言われています。

主な原因は、溶血性連鎖球菌(一般的には溶連菌と呼ばれます)への感染。溶連菌に感染することによって細菌に対する抗体が体内に作られ、その抗体と細菌が結合したものが腎臓にくっついて炎症を起こすことで起こるのです。

溶連菌感染症は、小児の間ではかなり一般的な感染症のひとつですから、ほとんどのお子さんが罹患するといっても過言ではありません。感染力はそれほど強くありませんが、お子さんの間では感染しやすいようです。大人にもまれに移ることがあります。

症状は、喉の痛みや発熱、体全体に広がる細かな発疹などが特徴的ですが、抗生剤が良く効く病気です。10日から2週間ほどしっかりと抗生剤を服用すれば、感染症の症状自体はそれほどひどいものではありませんし、すぐに症状は改善します。

しかし、注意しなければならないのは罹患して1~3週間後くらいに急性腎炎を発症する方がまれにみられることです。血尿やむくみなどが主な症状ですので、溶連菌感染症に罹患した後は腎炎の症状に十分注意しましょう。

急性腎炎のひとつ腎盂腎炎について

細菌やウイルスが尿道から侵入して尿道を逆流、まれにですが腎臓にまで達してしまって腎臓で炎症を起こすことがあります。このように、直接的に細菌が腎臓にくっついて炎症を起こしたものを腎盂腎炎といいます。

尿道から腎臓に至る尿路全体が炎症を起こしていて、腰痛や発熱、膀胱炎のような頻尿、残尿感もあります。

膀胱と尿管の間には弁のようなものがあるので、健康な方なら、尿と一緒に細菌が逆流して腎臓まで達することはありませんが、何らかの原因で弁が機能しなかったりすると、この病気が起こります。

膀胱炎などと同様に、抗生物質で治る病気ですが、すぐに症状が緩和しない場合は、尿路に結石や前立腺肥大などの障害が起こっていることが考えられるので、泌尿器科で詳しく検査を受けることをおすすめします。 

慢性腎炎の原因と症状

慢性腎炎は、慢性糸球体腎炎とも呼ばれ、原因や治療法が異なる様々な疾患の総称です。

急性腎炎とは基本的に性質が異なっていて、現段階の技術では完治しない病気が多いのが現状です。

主なものの中には、後に別ページでご説明するIgA腎症のほか、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎など、様々な疾患があります。慢性腎炎は、急性腎炎が治りきらず慢性化する場合も1割ほどありますが、その他の9割は原因不明で起こると言われています。

自覚症状は疾患が進むまであまり現れず、蛋白尿や高血圧などが持続。定期健診の尿検査で指摘されて病気に気が付く、というケースが多いようです。 

急性・慢性糸球体腎炎それぞれの治療法と生活上の注意点

急性腎炎の場合は、症状によって一時的に透析が必要なこともあり、長期間の入院と安静治療が必須です。しかし、1年~1年半ほどの安静治療を行なえば自然に治癒するケースがほとんど。しっかりと安静治療をすることで、慢性腎炎への移行を防ぐこともできます。

慢性腎炎と診断された場合は、完治しないことも多いので、腎機能を低下させず維持する方向で治療を行います。定期的に外来を受診して検尿などを行い、症状が進んでいないかをチェック。さらに食事療法や薬物療法を行います。

使われる薬剤の主なものとしては、降圧剤や免疫抑制剤、抗血小板薬、抗凝固剤など。活動性が強い慢性腎炎には副腎皮質ステロイドホルモン剤などが用いられることもあり、副作用や合併症に注意しなければならないものもあります。

生活する上での注意点としては、急性の場合でも慢性の場合でも安静がとても重要。安静の度合いは人によって違うとは思いますが、体の負担にならないような生活を送るということが基本になります。立って歩いているよりは、横になっている状態の方が、血流量などの観点からも腎臓には負担がかからないと言われています。

スポーツは完全に禁止されているわけではありませんが、タイムを競うものや長時間かかる競技、団体競技などはやめておくのが無難でしょう。

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