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自動腹膜透析(APD)

APD透析とは

腹膜透析方法の一つであるAPD透析(自動腹膜透析)とは、自動腹膜透析装置(サイクラー)という機械を使って、腹膜透析を行っていく方法です。

睡眠時間を利用して夜間の時間のみ自動的に透析液の交換を行うNIPD(夜間間欠式腹膜透析)と、夜間だけではなく日中の利用も加えたCCPD(持続周期的腹膜透析)があり、透析を行う患者さんの状態によって、より適したサイクラーの使い方が選択できるのが特徴です。

それでは、機械を使った腹膜透析法のAPD透析には、どのようなメリットやデメリットがあるのかについてご紹介していきましょう。

APD透析のメリット

APD透析は機械を使って透析液の交換を行うため、主に夜間就寝中を利用して透析治療を行い、日中の時間的拘束が少ないことから、社会復帰がしやすいという点が、大きなメリットとして挙げられています。

また、あおむけで寝ている姿勢で透析液の交換を行うため、腹腔内の圧力が低く、多量の透析液を注入することが可能なのも、APD透析のメリットとされています。APD透析の方法であるNIPD、CCPDそれぞれに指摘されるメリットは、次のようになります。

NIPD(夜間間欠式腹膜透析)のメリット

NIPDは、夜間の睡眠時間のみを利用して透析液の交換を行う方法ですので、日中は比較的自由に日常生活を送ることが可能です。そのため通勤や通学など、社会復帰を強く希望する方にとても適していて、患者さんのQOL(生活の質)を飛躍的に向上させることができる方法とされています。

CCPD(持続周期的腹膜透析)のメリット

CCPDは、夜間だけではなく日中の透析液貯留を加えていますので、最も多量の透析量を得られるというのが、最大のメリットとされています。NIPDでは十分な透析効果を得られなくなった場合に、昼間に1~2回のパック交換を加えるCCPDに切り替えることで、透析量を増やしながらQOL(生活の質)を保っていくことが可能となります。

APD透析のデメリット

APD透析の最大のデメリットは、サイクラーという機器を利用しているという点にあります。導入するにあたっては、サイクラーを設置するためのスペースや電源が必要となりますし、夜間の使用中に停電などの緊急事態が起こった場合の対応なども、認識しておくことが重要となります。

また、就寝中に透析を行いますので、寝返りなどで体位が変わった時に、接続チューブやAPD回路がねじれてサイクラーのアラームが鳴り、透析自体を中断せざるを得ない事態が起こる可能性もあります。

その他にも、1回あたりの貯留時間が短くなるため、中~大分子量物質の除去効率が低下する可能性がある、また頻回交換の短時間貯留では、ナトリウム除去量が低下する可能性がある、ということもAPD透析のデメリットとして挙げられています。

どんな人がAPD透析に適しているのか

APD透析は、夜間の就寝中に行う腹膜透析療法のため、日中は比較的自由に社会生活を送ることができます。そのため、通勤や通学など社会復帰を強く希望される方に、適した方法とされています。

また、注液量を増やすことが困難で透析不足になりがちな方や、腰痛・ヘルニアといった合併症があり、腹腔内圧上昇が望ましくない方にも適しているとされています。

APD透析を導入している人の声

12年前の春のこと、半年ほど前から検査数値が急に悪くなりはじめて、残業すれば頭痛がするし、1、2か月前からは通勤時に息切れするようになっていました。それでも「もう透析を具体的に考えましょう」と言われると、本当にショックでした。絶望感が強かったです。腹膜透析と血液透析の説明を受けましたが、とても悲しくて、良く理解できたか怪しいです。ちょうど3月末でしたので、仕事を続けるために腹膜透析を選択しました。フルタイムで働いていたので、自分なりに考えて血液透析では難しいと思ったからです。説明を受けてから1か月後の5月の連休を利用して腹膜透析を導入しました。腹膜透析では最初にカテーテルの挿入手術が必要なのですが、私は術後の痛みが2、3か月と長く続き、その期間は通勤も辛かったです。でも痛みがなくなって、気が付くと体調も良くなっていました。

私の場合は、主に寝ている間に機械を利用して行うAPD(自動腹膜灌流透析)でしたので、普通に勤務を続けることができました。保存期の後期よりはるかに体調も良く、会議や残業も平気でした。月2回ほど通院しました。若いころから、季節ごとに国内小旅行に行くのが習慣でしたが、導入後も変わらずに行っていました。1泊くらいなら透析液と透析液を温めるための加温器とカテーテルを繋ぐ器具を小さなスーツケースに入れて、ガラガラと引いて行きました。数泊する場合は、依頼すれば透析液の業者がAPDのための機械や透析液を直接ホテルへ届け、回収もしてくれました。

体調が良くなって、多分意欲的になったのでしょうか、通信教育で心理学の勉強もしました。スクーリングも問題なく参加できて、若い人との交流を楽しむことができました。腹膜透析しながら7年間勤務を続けたのち、退職して血液透析に移行しました。

腹膜透析は水分やカリウムなどの制限がいくぶん緩いので、食事の負担感はほとんどありませんでした。しかし、いずれ血液透析へ移行することを考えていたので、塩分に気を付けたり、水分の摂り過ぎにも注意しました。大好きな果物も、一度にたくさん摂らないよう習慣づけていきました。

腹膜透析ではおなかからカテーテルが出ているのがやはり不便ですし、出口感染の不安がいつもあります。気を付けていても、体調不良なときに感染することがあり、いつもカテーテルの状態に注意し、何かあればすぐに病院に行く必要があります。

腹膜透析を導入した病院には患者会がなかったので、私は個人会員として東京腎臓病協議会に入会しました。そして勉強会や交流会にはなるべく参加するようにしました。活動内容は血液透析療法のことが中心ではありますが、いずれ血液透析に移行する時のために、勉強して情報を集めることが大事だと思ったからです。

これから透析治療を受けることになる方にとっては、ある程度予想をしていても、いざ導入となると不安が大きく、みじめな気持ちになるかと思います。それでも透析というしっかりした治療を受けられるのですから幸運なのではないでしょうか。良い病院・クリニックを選んで、自己管理にも留意していけば、十分に生活を楽しむことができます。仲間はたくさんいます。一緒に頑張りましょう。
(64歳・女性)

※出典・www.zjk.or.jp/jinyuukai/experiences/dialysis-treatment/index.html(全腎協)

※体験談はあくまでもひとつのケースであり、個人によって効果や状態は異なります。


<参考文献>

日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン
https://www.jsn.or.jp/guideline/guideline.php

透析治療ガイドライン
https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2094.html

東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター公式サイト(血液透析と腹膜透析の比較)
http://www.twmu.ac.jp/NEP/hukumaku-toseki.html

大阪府立急性期・総合医療センター公式サイト CAPDとは?
http://plaza.umin.ac.jp/~kidney/toseki_capd.html

関西CAPD看護研究会公式サイト 腹膜透析(CAPD/APD)とは?
http://www.kansai-capd-ns.com/capd/

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