人工透析を受ける場合1か月にかかる医療費は、血液透析では約40万円、腹膜透析では30~50万円程度といわれています。このように、人工透析にかかる医療費は高額で、しかも治療期間は数十年に及ぶこともあるため、患者さんの経済的な負担は非常に大きいといえます。
そのため、患者さんの負担をできるだけ軽減し、治療の継続がしやすくなるよう、様々な公的医療費助成制度が確立されています。
透析患者さんが必要な手続きをすることで、受けることのできる治療費の助成金制度には、次のようなものがあります。
国民健康保険・後期高齢者医療など、各保険制度では人工透析は「特定疾病」に指定されています。そのため、加入している保険の窓口に「特定疾病療養受領証」の交付を申請することで、高額療養費の特例として(一般の高額療養費とは異なる)透析治療の自己負担額は1か月1万円が上限となります。
ただし、一定以上の所得がある方の場合は上限が2万円となり、外来や入院・薬局などそれぞれでの負担となります。また、入院時の食事代はすべて自己負担となります。
障碍者または障害児の身体的障害を軽減させる目的で受ける医療費について、患者さんの自己負担分を国制度で助成するものです。ただし、世帯の所得によっては、自己負担が発生することもあります。
この助成を受けるためには、身体障害者手帳が交付されていることと、自立支援医療機関の指定を受けている医療機関での受診が、必要となってきます。
18歳未満(20歳まで延長することが可能)の透析患者さんは、こちらの制度でも医療費の助成を受けることができます。
身体障害者手帳で等級が1または2級(一部の県では3級まで)の障害者が医療を受けた場合に、医療保険や自立支援医療などの自己負担分に対して、各都道府県や市区町村が独自の制度として助成を行っています。
この制度は、都道府県または市区町村によって内容が異なっており、入院時の食事代の自己負担分を助成している自治体もあります。
指定難病と透析治療を公費助成する、東京都独自の助成制度です。都から支給される「マル都医療券」および「特定疾病療養受領証」を医療機関に提示することで、自己負担分の1万円を東京都が負担してくれます。
透析治療で働くことができなかった場合、申請することによって次の支援制度を受けることができます。
サラリーマンや公務員が病気やけがで働くことができなくて、その間の給料が支払われない時には、療養期間中の生活を保障するために、健康保険組合から傷病手当金が支払われます。(※市区町村の国民健康保険には、この制度はありません)
支払われるのは、標準報酬日額(給料の日額に近い額)の6割が当てられ、たとえ給料が支払われても十分に働くことができず、給料がこの額よりも下回った場合には、給料と支給額の差額が傷病手当金として支払われます。
支払期間は、休み始めて4日目から1年6か月間となっています。
雇用保険加入者が65歳未満で離職した場合(65歳で定年退職した人も含む)、雇用保険から基本手当(失業保険)が受けられます。受給期間は離職理由や被保険者期間、年齢などに応じて90日から330日までありますが、障碍者の場合その事情や就職が著しく阻害されているという状況であることから、360日まで受給期間が延長されることがあります。
公共職業安定所に求職申し込みをした人が、病気またはけがで仕事ができない時、雇用保険から基本手当と同額の傷病手当を受けることができます。
<参考文献>
全国腎臓病協議会公式サイト 仕事ができないときの支援制度について
http://www.zjk.or.jp/kidney-disease/use-social-security/5_52e25469a1966/index.html
透析治療にかかる費用
http://www.zjk.or.jp/kidney-disease/expense/dialysis/
利用できる社会保障・福祉制度
http://www.zjk.or.jp/kidney-disease/use-social-security/index.html
厚生労働省ホームページ 自立支援医療制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/gaiyo.html